January 04, 2004

中国コンテンツbiz:「韓流」ブームの仕掛けは親しみやすさの刷り込みから

CCTV1。中国唯一の全国放送局である、中央電視台のトップチャンネルである。
今やCCTVだけで9チャンネルを擁し、CCTV1はNHK総合のように視聴率でのトップという役割よりも、中国のTVとして頂点のコンテンツを放送するという象徴性の方が強くなっているこのチャンネルで、元旦の深夜にある特別番組が行なわれた。

CCTVと韓国KBSが共同制作で生放送する、中韓トップアーティストによるジョイントポップコンサートである。

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日本のメディアでも指摘され始めている「韓流」という現象がある。
中国で今、韓国からのポピュラーカルチャーが若者に大人気で、韓国からの流れということで「韓流」と呼ばれているというのだ。そのブームは今や、日本からのポピュラーカルチャーへの人気よりも強いという向きもある。その中心にあるのは韓国のアイドルたちである。この「韓流」の裏に中央電視台がある。

その表に見える成果の一つがこの元旦コンサートである。

今、韓国のアイドルたちは、中央電視台の歌謡番組を中心にバラエティー番組(中国では「総芸」という)に現在、数多く登場している。その登場の仕方は、外国からのお客様としてゲスト扱いではなく、香港や台湾からのタレント同様、対等な出演者。そのことが、視聴者に親近感を与えている。

CCTVの制作担当者によると、ゲスト扱いでないため、番組出演料が国内トップクラスのタレントと同様くらいのもの(日本のタレントはゲストで無いなら高くて使えない)であるが、局として妥当な限りの経費でまかなえる出演料として出演し、特別扱いの必要も無いため、番組としても扱い易い存在となっている。
そこでの扱いは、近くて発展している国からの新しい音楽やエンタテインメントを演じるエンターテイナーとしてのもので、音楽のセンスはもちろんファッションやライフスタイルの一つのお手本としての新鮮さも打ち出せる存在とされるようになっている。

この元旦コンサートもまた、韓国のアーティストが中国とつり合いの取れる存在、すなわち、中国のタレントやアナウンサー陣がひきたてられるからこそ、逆にいえば韓国の視聴者にとっても同等だからこそ(=互いに視聴者獲得は出来る)、成立したといえるだろう。
これが日本のテレビエンタテインメントと一緒なら、視聴率が取れないコンテンツとして、成立しないだろうから、出来ないのである。

とはいえ、日本人同様、台湾や香港のような漢民族では無いタレントによるエンタテインメントという区別による浸透の難しさがあると思われるかもしれない。
しかし、東北部を中心に少数民族として数多くの朝鮮族が住んでいるので、民族基盤として強くファンとなる層が数多く存在する一方、韓国企業の中国全体への進出で、韓国にたいする好意的なイメージがあるため親近感が沸き易いこと。そして、日本との関係のような歴史認識が存在しないために、何の社会的な阻害意識が無くても親しめるとともに、政治的にも自由に扱っていい存在ということで、既に克服しているという。

韓国のエンタテインメント界は、全国放送のテレビを用いることによる、タレントの露出と親近感を与える、正攻法で短期間のうちに、映画や音楽、それにタレントというコンテンツを売り込む回路の構築に成功したのだ。

とはいえ、この文章を書いているときには、BoAが「日韓を制するトップアイドル」として、韓国側のトリで英語で唄っている、この特番ももはや2日になった深夜の放送。熱風韓流といっても、実際にはプライムタイムははれるほどの編成といけるものでは無いようである。