ART OF CAMPAIGNING
マルチメディアでキャンペーンはこう出来る

3/12 アムステルダム

→マルチメディアを効果的に用いることで実現する地球規模のグラスルーツ・キャンペーン。その実践者たちが、巨大ライブハウス・PARADISOの舞台で語る、N5Mの初日最大の山場のコンファレンス、それが "ART OF CAMPAINING" である。

 





受刑者を使って民間企業が儲けられても(オーストリアのアウトソーシング刑務所の光景)


 

ペーパータイガーの創始者が語る
世界の刑務所を改善せよな運動

→UCサンディエゴで教鞭を執るとともに アート的パブリックアクセス運動「ペーパー・タイガー」の創設者の一人であるディディ・ハーレックは、アメリカにおけるメディアによる社会構造への変化を 長年にわたり論じてきた論客であるとともに、社会運動としてのメディアアートの可能性を求める実践的理論家である。

その彼女が、今回提示するのは、「刑務所問題に対するネットアクト」

 アメリカを中心に英国、オールトラリアの刑務所で 受刑者たちが今、どのような待遇を受けているのか、 そしてそこに存在する理不尽な問題とは? ということをよく編集され、また読み物としても 味わえるWEBコンテンツとして紹介することで、 臭い物に蓋を装い、関心が薄い一般の生活者に 対して刑務所の現実と受刑者の待遇改善に対する喚起を行う上で、効果をもたらしていることを それぞれのWEBプロジェクトをめくりながら説明した。

 最後に新しい刑務所のかたちとして注目されている民営による刑務所が何をもたらして行くのかを 提起するために作ったビデオを現在他のメディアを用いたアクトのかたちの一つとして流しながら、近頃の関心をこう語って閉めるのであった・・・

 「要はオーストラリアや英国みたいに企業化された 刑務所でただ同然の労働をさせておいて、それをマーケティングに基づいたビジネスにして、大儲けの手段になりますよ、がリストラということで うまく行くというのなら、受刑者は奴隷と変わらない存在じゃないの、どう思うの一体・・・ ということを伝えるということなのですよ」 と、巧みなパネルであった。

 


販売価格の内の1%がグローバルブランドのジーンズの製造人件費の原価


これかわいいよね


タイでのおもちゃ工場火災で亡くなった工女さんたちの屍



香港でのデモの光景


イネケ・ゼルデンルスト


履いているあなたにレッドカード

 

 

 

下請け国家の労働者の賃金が 販売価格の1%しか含まれていないのが即GETの正体なのを知ってますか
クリーン・クロース・キャンペーン

→暗転、ハイテンポのテクノミュージックが鳴り響き、舞台の一点にライトが照らされる。 そこには何人ものマッチョガイズが上半身裸でジーンズのいでたちで整然と並んでいた。

It's show time!

 ガイズが踊る中、ひとりのクールガイがはさみでシーンズを剥ぎ始める。

 スクリーンにはシーンズをモチーフにしたブランドもののジーンズの生産コスト表が照らされる。 製造原価は極めて少ない、その少なさと同じ分だけ、 スクラップショーは激しくなる。 最後にはまたの部分を隠すだけしか残らないマッチョ ガイズのジーンズ。会場はもちろんクールなストリップの パフォーマンスに大受けである。

→剥がされたマッチョガイズが陽気に舞台を離れる、壇上には香港から来た活動家がふたり。

 「アジア・東欧でグローバル企業が行っている搾取を無くせ!」と高らかに宣言する。香港を舞台にアジア各地で展開する 最底辺の労働者への搾取を警告するNPO、 亜洲専訊資料研究中心 Asia Monitor Respurce Center http://hk.super.net/~amrc からの2人である。

 大きなぬいぐるみを抱えて、デモンストレーションが始まる。梁寶霖は広東なまりの英語で素朴に切々と話し始めた・・・

  「このぬいぐるみ、かわいいよね。(会場笑い) アムスの街角で買った中国製なのだけど、 買った値段のうち、工賃っていくらか分かる? 1%しか無いのだよ・・・ それも事故だらけで 娘さんと変わらない女工さんが死んだり、 大怪我したりしているんだ・・・ かわいいよね、 このぬいぐるみ・・・ 娘さんに買ってあげたり するんだよね・・・ でも、そういうかわいいおもちゃを ただ同然の工賃で命がけの犠牲のもとで作られて いるのを知ってほしいんだ・・・」

  会場はしずまにかえり、梁を一点に話を聞き始めた。

  「こんなの人間の使い捨てだよ。 そこで、アジアで起きてるこの理不尽を無くしたくて 活動を開始したのさ」

  WEBページで活動内容を紹介、次にビデオでデモンストレーションの模様を見せる。 アジア各地の大都市で展開したデモ活動、特に異様であったのは本部がある香港での 出来事であった。 広東省での劣悪な下請け労働を訴えるデモ隊。 そこには香港警察が対峙、デモの解散を迫っていた。 そこで壇上からこう語る。 「僕たちはこんなひどいことを無くそうという素朴な気持ちで始めてきた。それがこの時、自由な活動を 求める政治的運動の側面を嫌が上でも 持ってしまったのだよ・・・ ひどいことに。 ただ、僕たちは素朴に願っていただけなのに・・・」

 心が動かされるキャンペーンである。話術もさることながら、メディアの特性を活かした活用の仕方、表現の仕方まで、うまさこのうえないのだ、本当にメッセージが伝わる。 デモンストレーションの後、メディアキャンペーンの 手法について実際論として語り始めた。

 現在の運動は、世に問題を喚起する部分で 効果をあげていると提示。効果をあげるために、 「自分たちが用いることが出来るメディアを 古いメディアであれ新しいメディアであれ出来る限り用いている」と語り、それだけでなく、 「個々の内容やクオリティー、そして展開方法にも 最大限の注意を払っている」と言うのであった。その発言の通り、一見、素朴な運動でありながら、 圧倒的に訴求力を持ち、また、反面洗練された キャンペーン技術を磨き続ける、アジアからの新しいスターの登場に会場は大きな拍手をもって 応えたのであった。

→その後、マッチョガイズのパフォーマンスを キャンペーンとして仕組んだ、 クリーン・クロース・キャンペーン The Clean Clothes Campaign より、イネケ・ゼルデンルストが登壇。 提携関係を結ぶ、香港での運動と異なる 洗練を楽しむキャンペーンの現場を紹介し始めた。 クリーン・クロース・キャンペーンはヨーロッパ10ヶ国にネットワークを持ち、ゼルデンルストはアムステルダムベースのアクティビスト。

 視覚化すること、ストーリー化することが問題を強く訴求するのに効果的だと語る。企業イメージを直接ヒットするキャンペーンを デザインすることは、訴えかけたい層である問題の品物やブランドを購入するコアとなる人々に対して関心をひきつけるだけでなく、強く問題を喚起すると いうことで効果的であると考え、実践ケースを紹介するのであった。

 東南アジアを中心に劣悪な労働環境で製造に従事させている、イメージ重視型スポーツ用品企業である、 NIKEに対してということで次から次へと、 キャンペーンの模様とデザインを指し示す。

街角でNIKEの靴を履いている若者にレッドカードを 与えるデモンストレーション

NIKEのアイコンである「スウォシュ」をデザインしなおす コンテスト:
血のしたたるナイフのようなスウォシュ
?なスウォシュ・・・

 もちろんナイキだけを狙い撃ちしているわけで無く、 NIKE自身が構築した企業イメージと実際の乖離が とても高いということでナイキをプライマリーに置いていると語り、この様な問題傾向が他の幾つかのスポーツ用品 企業にも散見されるので同じようなキャンペーンを 行っていると語る。 (バックに映されているのは:無垢なラテン系の少女に 縄をつけてふんぞり返る小太りで半ズボンのサッカー小僧を イメージでいかにもNIKE的に作ってあるポスター)

 かっこいいコーポレートコミュニケーションで自身を粉飾するなら、こっちもかっこよく汚してメッキを剥がす、その方が、人々にも強く訴えかけるし、 賛意を示してもらいやすいからね・・・ とゼルデンルストは続けるのだった。

 コミュニケーションにはコミュニケーションで指し示すは、

JUST STOP IT. (JUST DO IT キャンペーンを逆手にとってもの) で固めるデザインワーク集・・・
ベネトン広告かな・・・と見ると、 札束を口にほうばるエグゼクティブおやじの姿・・・

  最後にゼルデンルストはインターネット上での フューチャープランを示して締めた。 WEBサイトによるキャンペーンコンテンツの 充実の部分だけでなく、 世界250以上のクリーン・クロース・キャンペーンと 関係している活動グループをつなぐ地道な情報交換と連絡、共同作業のためのプラットホームとしての機能を整備して行きたいと・・・

クリーン・クロース・キャンペーン http://www.cleanclothes.org

 

 

 






NO ONE IS ILLEGAL
kein mensch ist illigal

→1997年にドイツ・カッセルで開かれた現代芸術祭、 ドキュメンタX から、あるメディアキャンペーンが始まった。
 アーティスト、知識人、メディアアクティビストが全欧的に結集し、西欧での移民の自由と人権保護を求めて動き始めたこのキャンペーンこそが、 NO ONE IS ILLEGAL である。
  NO ONE IS ILLIGAL では、それぞれのスペシャリストが持つ能力とネットワークを活かしあいながら、WEBサイト、 出版、ドキュメンタリービデオ、パイレーツラジオ、そして、 Tシャツやステッカーなどあらゆるメディアを駆使して、 キャンペーンを続けている。
  そのスペシャリストのネットワークと取り組みは、 日に日に欧州全土のプロフェッショナルフィールドに広がり、日々運動は成長しつづけていると メンバーのギレラ・シドラーと、フロリアン・シンドラーは語る。
  アーティストとして得た表現する力を活かし、まさにボーダーを取り除くために、新しいボーダレス メディアを用いるこの運動は、自分たちと社会との関わりあいの中でぴったりの貢献活動の事例であり、 またアーティスト自身の関心による自発性が よりキャンペーンそのものとしても質の高いものに上げつづけている事例であるといえるだろう。http://www.contrast.org/borders

 

 

 

 

→これらの他にも、 アートによる政治・選挙活性化キャンペーン Chance 2000 (ドイツ)など、 「終わり無き日常」?を生きる生活者や若者に対して、アーティストから問題意識を キャンペーンとして喚起してもらおうという スマートな文化的価値判断で脱「まったり」を 目指す、現在進行中の運動事例が数多く取り上げられ、これからの「まったり」化する 日本でのアートキャンペーンを考える上でも、 どう自分も味わいながらおもしろく訴えかけるのかを 構築してゆく上で示唆に富んだパネルであった。

 

取材・編集・デザイン:岡田 智博  futurepress@coolstates.com

 

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