オープニングの日である9月2日、そのテーマの幕開けとなるイベントが立て続けにキックオフされた
→ まずはアルス・エレクトロニカ・センター直轄からアウトソーシングに変わったopenX。
その名前もエレクトロビーと変わり、今までのヨーロッパのネットアクティブ系アーティスト大集合の合宿所状態から、寿司やカクテルが振舞われるこじゃれたネットプロジェクトのショーケースに様変わりした。
今までのプログラミング系やネットを用いた社会派コミュニティー、そして風刺ものといったのから打って変わり、音楽などのアートデータベースやストリーミング放送などコンテンツ寄りのプロジェクトのものに多くが偏り、一種独特の怪しさから来る期待感や面白さが消えうせてしまった。
また、そこで即興的に展開されるプロジェクトの多くは、NEXT SEXにちなんだものとばかりにSEXにしましょうと、のりでやっている感覚でこじゃれたお気楽度が大。
ゴキブリの次に賭けられるのは君の精子だ
→そして開催都市であるリンツを代表する広場、ハウスプラッツのど真ん中では、テーマイベントである
Sperm
Race 「精子レース」のオープニングイベントが開かれた。
「精子レース」とは、年々数が減り運動量が弱くなる人間の精子の問題に焦点を当て、一番速い精子を求めて競わそうというレース。
参加者の男性が搾り出した精子をもとに、女性陣がお金を賭けるギャンブルレースだ。昨年はテーマであった「ライフサイエンス」にかけて、世界最速のゴキブリを決める「バグレース」を開催したが、今度は精子ということだ。どちらも合法的なギャンブルとして展開したのだからたまらない。
とにかく「精子レース」と広場で顕微鏡での拡大ビジュアルとともに大きく掲げられ、アルス・エレクトロニカの代表や担当の科学チームが「精子」「精子」とマイクで連呼する姿は言いようの無いものであった。
ちなみに初日の勝利者はイギリスから。外人精子ということもあって不人気で高倍率だった。
オープニングパーティーはまるでドットコム
→ドナウ河を舞台にした10万人規模の巨大な音と光のデモンストレーション「サウンドクラウド」に続き、オープニングのしめを飾ったスケート場でのオープニングパーティー。
なぜかスケート場内に作られた会場に巨大スクリーンが各所に配置され、映像作品が流れる場内、アイスホッケーの選手やダンススケートが周囲で繰り広げられる姿はまるでドットコム企業の奇をてらった巨大パーティーかのようであった。
そして演目も、オーケストラが演奏する中、指揮者が身をくねらすと嬌声を演奏者が出す、ネクスト・セックスオーケストラともいうべきものであったりと、そもそもクラッシックな芸術がただの伝統芸能でしかないこの国のゆとりと、アートであるのならなんでもありというべき遊びが入り混じったものであった。
まさに陳腐化したように見える一日目、何でもありなのである
→一方で、リンツのあるオーストリアの連邦政府に極右政権の誕生という背景にもあるように、やはり眉をひそめる人もいることも確か。
この前日「精子レース」の開催場で準備作業をしていたフェスティバルスタッフが何者かに殴られるという事件も発生している。
また一方で、アルス・エレクトロニカと同様のメディア文化センターの一つでウィーンにあるパブリック・ネットベースが提供しているサーバーでユーザーであるアーティストやNPOが政府に対抗する運動を展開し、それを消去するよう連邦政府が指示したにも関わらず、本来の同センターの意図と異なると理由で守って来たことによって存続の危機に立たされている一方で、アクティビズム寄りの問題提起や展開を排除し正面を見据えていないと見受けられる人々からの疑問の声も、今までコーディネートをサポーティングしてきたキーパーソンも含めてあがっている、苦悩の幕開けだ。
取材・編集・デザイン:岡田 智博
info@coolstates.com
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