「Gas Book は無いのか?」
メディアアートを求めるという部分では少し違った交易会場

2/10-11 カンヌ・フランス

→メディアアートがどう欧州や米国で市場化して行くのかが実際に見える現場として訪れた milia 99 であったが その側面が交易会の部分ではほとんど見られなかった。

 マルチメディアタイトルのゾーンでみると、その内訳は教育用を中心に一般的関心に広く応えようとする CD-ROM の出展が多く見られる一方、デジタルTVや高容量通信を見据えた コンテンツ配信サービスを紹介する欧州各国のテレビ局系列の企業や売りこもうとするベンチャー企業が出展。インターネットの一般化を確実なものとしてインターネット上で送り出すコンテンツを提案する企業など本格的なマルチメディア通信・放送を 見据えたコンテンツの物色へと勢いが移りつつある。

 

 

 

非コンテンツ 企業展示として大規模なキャンペーンを行ったのはアップルとインテル

→アップルはカンヌの海岸に think different の看板を並べ、入り口には iMac の大きなバルーンを設置し、交易会場内に色とりどりの iMac を並べていぢらせる iMac cafe などを設置していたりしていたが、ブースの内容はマッキントッシュで出来ることを紹介するもので、コンテンツ制作社への導入を企図したものとなっていた。

  一方インテルはペンティアムIIIを前面に出してペンティアムベースで出来るマルチメディアプロダクトを DTM(デスクトップミュージック)からDTV(デジタルテレビ)サービスまで見せることでインテルベースへのコンテンツやサービスの対応を促すものであった。

 

 

 

 

 

「Gas Book は無いのか?」

→ふと見るとある若い参加者が日本人を見ると上のようなことを手当たり次第聞いていた。

「(Gas Book の発行者は)来てないし、来れるような状態じゃないよ」

 日本からのある出展者がその光景を見て語る・・・

 このような会場の中で数々のアーティステックなタイトルをCD-ROMとして 出し続けているデジタローグと 「まよなかのおしばい」が先週のマルチメディアOSAKA・グランプリに続き、ミリアドールも獲得したNHKエデュケーショナルと、マルチメディア独自の芸術性を持ったコンテンツと評価されているものが日本企業によるものであるというかたちが存在していた。

※11日夜開かれたコンテンツゴングショーで両社がそれぞれ力を入れていたタイトルのプレゼンでそれぞれブラボーとオベーションを頂いていたのが印象的だった。 (この模様は後レポートで紹介)

 

昨年と雰囲気が違うよ

→日本の情報・マルチメディア系出版社からの出展担当者は、私の戸惑いに対して 「昨年はすごかったんだよ。もう緑色のよく分からない液体飲んでいるようなやつとか色々いて、そして色々来て、俺の作品見てくれ、売ってくれって次から次にやって来たのだから・・・ それが今年いないから仕事とは関係無いけど、何かつまらないね・・・」 マイクロソフトの古川亨会長が個人的に育てているアーティストたちのためにブースを構えていたという話も昨年はあった(週刊アスキー)のだが。

 これと同じような声は各地で散見された。アーティストそのものや零細なプロダクションが昨年は多く参加していたのに今年は見ないというのだ・・・

 


Marleen Stikker さん 「N5M 来て下さい。すごいですよ・・・ヘアートが力入れてますから」

メディアセンターにとっての milia

→欧州各地に建立されるようになった メディアセンターからの出展者は結局 ドイツ・カールスルーエ市のZKMだけであった。ZKMのPR担当である Kiristen Goroth さんは milia の出展価値として、ZKM所属のアーティストの作品をCD-ROM化したコンテンツの販路獲得とZKMそのものの宣伝に置いていると説明。
 他にも欧州で開かれるコンテンツ関係の催しものには積極的に参加するとともに旅行関係のショーにも出展していると語る。
 「何たって観光客にもっと来てもらうために作ったということもありますので・・・ わが街最大の観光地ですから・・・ 街起こしですよ」
  アーティストそのものの売りこみやタイトル化を話せる場であるかということをうかがうと 「そのアイディアはあまり無いし、そこまでまだ 到っていない」と語った。

 参加者としてやって来たアムステルダムを代表する NPOメディアセンター De Waag 新旧メディア研究所の Marleen Stikker ディレクターは milia 参加の意義を 「うちがしていることのあたりを色々な企業の人間を相手に探れるということかしら」 と語り、 「ノートブックPCを抱えて、こんなのあるのだけどと 見せてまわって、いろいろ得ようという訳です」 という。

 メディアセンターにとっての事業チャネルは別のところにあるようだ・・・

 

華やかなのは商談よりも情報収集?

→「あたりを探る」

 このような目的での参加を語る人間が私が聞く限りでは多かった。

 ブースを開くよりも milia の場に行くことの方にウエイトが今回は高かったように思える。

 スタンドアロンのコンテンツからネットワーク、それもCD-ROMの容量を凌駕するギガビットの世界に急速に舞台が移行する過渡期にあってヨーロッパ、そして米国ではものを売ることよりも何をどうしたら事業になるのかを探る季節なのだろう。CD-ROMは金にならない、インターネットでうまくいったビジネスなどほとんど無いじゃないか、と思っている間に次への胎動が大企業だけでなくベンチャーやコンテンツプロダクションを巻き込んで大陸規模でオープンに始まっているのである。その胎動の一環は次に続くコンファレンスレポートで紹介して行きたい

 

取材・編集・デザイン:岡田 智博  futurepress@coolstates.com

 

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