写真1


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symposium - 9.8 1998 リンツ・ブルックナーハウス

US Air ForceINFOWAR  

→「Information Warfareを考慮に入れずしてオペレーションは出来ない」アメリカ空軍大学で未来戦研究において主導的立場にあるジョージ・ステイン氏 -写真1- George J. Stein (Member of the faculty of the USAF Air War College and the Chairman of the Department of Future Conflict Studies) はINFOWAR シンポジウムの1日目である9月8日に講演を行った。

→講演では、 Information Warfare とはどういうものであるかを専用に仕込んだパワーポイントを用いて丁寧に説明 -写真2- 「ここまで分かりやすく説明していいのかしら」(福岡週刊アスキー編集長)と思える程、理解しやすいのであった。もちろん、具体的な部分は "I don't kwon, how..." とはぐらかすので本当は何をしているのかは講演だけ聴いても分からないのであるが・・・



写真3


写真4


写真5

 

 

■ 米空軍は3つのタイプに Information Warfare
  区別している

→講演の冒頭、ステイン氏は「この講演は私の私見に基づくものであり、米国政府や空軍の公式見解では無いし、無関係なもの」-写真3- だと前置きして始めた。

→ステイン氏は Information Warfare に取り組むにあたって3つのキーとなるアイディアがあると説明 -写真4-、それは "Indirect Information Warfare""Direct Information Warfare"、そして "Information Attack" であると語る。

 "Indirect Information Warfare" とは、間接的な手法を用いた情報操作による影響を防ぐ、もしくは狙うものと説明 -写真5-、具体的には論理的な手法やオペレーションに対して内部的な仕掛けを要するものであると語る。中身としては、マスメディアを用いたプロパガンダやオペレーションそのものについての情報管理などがあげられ、極めて古典的なものであるとする。

 "Direct Information Warfare" は論理的手法や内部的な仕掛けを施すことなく、情報の中身を相手にさとられること無く直接改竄したり、意味合いを変えてしまう -写真6- もの。中身としては "Can we do this?, I don't kwon..." とはぐらかす。

 "Information Attack"は直接、相手の情報施設を叩く -写真7- こと。例えば、交戦国のレーダーサイトを爆撃する "That's it" のようなことと語る。 一方で、"Direct Information Warfare"の手法を用いることによって、戦闘用プログラムの破壊などということで"Information Attack"よりも効果的である可能性に目を向けなければならないと言う。しかしまた "Can we do this?, I don't kwon..." とはぐらかす。軍事的クラッキングが有効であるというに等しい発言であるので、本当にそれをしているのかと言うことははぐらかすしかないのであろう。



写真6


写真7


写真8

 

 

■ いったい何をたたくのか?

→直接的に傷をつけない戦術である、"Indirect Information Warfare" および"Direct Information Warfare"は、戦争遂行を背後でサポートしたり、補給やディジョンメーキング、世論といった、本質的な部分で戦争遂行に影響を与える。シビリアン部門での使用をまず、念頭に置いている。この分野では2つのターゲットカテゴリーに分けて説明した。-写真8-

 まず、実際の国家の主軸というべき文民部門での支配リーダー個人、戦術遂行や施政遂行のための情報伝達に用いられているコミュニケーション手段、および情報伝達のライフラインである電力供給そのものといった「シビリアン・リーダーシップ」をターゲットとして叩くもの。

 もう一つは、全体的な情報通信手段を叩いたり、金融および産業システムを情報改竄もしくは情報流通阻止で破壊したり、運輸・補給手段とエネルギー供給手段そのものを同じような手法で叩く「シビリアン・インフラストラクチャー」をターゲットにしたものである。

 「ラップトップコンピュータで遠隔操作してこんなことをするのは造作も無いものになるでしょうね・・・」とさらりと言うのであった。

 一方、銃後のシビリアンに対して出来ることは、前線に対しても可能な訳で「ミリタリー&インフラストラクチャー部門」での戦闘員や戦闘本部員に対するインフォメーションアタック、作戦情報伝達機関・インフラに対するアタックや「兵器システム」そのものの情報および機器機能(兵器そのものや防空・諜報システム等)を叩くとうのも基本として重要なターゲットである -写真9- と説く。この分野では直接的な"Information Attack"ももちろん用いると。



写真9


写真10


写真11

 

 

 

CNNやネットは邪魔だ

 このような Information Warfare がもたらす効果をあげるとしたら、交戦相手に対してタイムリーに戦闘能力を阻害することが可能だということに他ならないとステイン氏は語る。

→すごくうまくいきそうに思うかも知れないが、実は"Indirect Information Warfare" の効き目が悪くなりつつある危惧が日に日に高まっているとステイン氏は嘆く。CNNなどのグローバルなサテライトニュースメディアの登場とインターネットなどの手段によって常に沢山の経路から様々な情報が入手でき、自由に発信できる時代(「あなただって広告代理店に頼めばどんな情報でも自由に発信できる」と皮肉りながら)になったために、知的レベルでの情報操作がとても難しくなっている -写真10- というのだ。

→「こういう事態を迎えて、米空軍としてはダイレクトに敵の情報系にダメージを与えたり、マインドを萎えさせたりすることが確実な手法ではないかと私は考えている」と語り、その具体的なターゲットを明確化するなら"Mediator"もしくは"Orientator"というステイン氏自身が造語として定義づけた存在になるだろうと語る。

 "Mediator"もしくは"Orientator"という存在はオペレーションにおいて必要不可欠な情報処理媒介であり情報伝達媒介であり判断材料としての情報という存在を定義づけたタームと説明、これら処理および流通プロセスを破壊することで、物理的に司令官や戦闘部隊、後方支援を担う敵にダメージを与えなくても戦闘遂行能力を弱めてしまう効果を速やかにもたらすことが出来るとおさらい。 -写真11- これからの戦争は "Mediator" もしくは "Orientator" をどう制するかということが決定点となるという締めでステイン氏は講演を終わらせた。


   

■ 『放送戦闘機』配備してマス

→その後、聴衆からの質問へと移り、質問の時間はのべ20分近くにもおよぼうかとする程、熱気を帯びたものであった。これらの質問の中で特に興味深いものとして「実際に で敵国の指導者を降ろしたりするような、Information Warfare のみによる戦争を行ったり、勝利したことがあるのか」というものに対して、ステイン氏は「具体的にはどうなのかは分からないが、空軍は敵国内で放送を行って世論の力によって戦局を有利にするための『放送戦闘機』を保有し、実際にオペレーションしている」と、今回の論議では数少ない具体例を明かしたということがあった。『放送戦闘機』である、まさに情報によって内側から崩壊させる Indirect Information Warfare を具現化した兵器ではないのだろうか。米軍は他にも奥深い情報兵器や戦闘員を持っていそうだと大いに想像してしまう講演であった。

 

取材・編集:岡田 智博 futurepress@coolstates.com

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(c) OKADA, Tomohiro, The Cool States Communications, 1998