Prix ARS Electronica 99
大紹介
.net / コンピュータミュージック編

9/8 リンツ・オーストリア

→20年目を迎えたアルスエレクトロニカの区切りであるとともに、来るべき21世紀の幕開けを前に、プリ・アルスエレクトロニカ(アルスエレクトロニカ賞)の選考においても様々な新機軸が見られた。
 特に、デジタル・ミュージック部門におけるエイフェックス・ツインやネット部門におけるリナックスの産みの親で知られるライナス・トーバルズのゴールデン・ニカ(大賞)授与は、際立ったケースということがいえるだろう。

この項は、『週刊アスキー』1999年11月10日号に筆者が寄稿した原稿をもとにしております。

 


エーフェックス・ツインことリチャード・ジェームス(左) とクリス・チュニングハム(中央)
Prix Ars Electronica の授賞式特番のスタジオにて(オーストリア放送協会リンツ支局)
Foto: Sabine Starmayr

コンピュータ・ミュージックからリニューアル
デジタル・ミュージック部門

→今年からコンピュータ・ミュージック部門は、デジタル・ミュージック部門に名称を変更。コンピュータを用いた現代音楽的なものだけでなく、対象を拡大して、デジタルを用いたありとあらゆる音楽とそれによるメディア表現の中から選び出す試みへと変化を遂げた。
 そのリニューアル最初のゴールデン・ニカは、エーフェックス・ツインことリチャード・ジェームスとクリス・チュニングハムが受賞。
  受賞理由もプリ・アルスエレクトロニカ初めてのミュージック・ビデオが評価されてのもの。評価対象となった、チュニングハムが映像を手掛けた"Come to Daddy"のプロモーションビデオは、登場する子供たちが全てジェームスの顔というモンドな一作。引き続き、最新作"Windowlicker"では、これでもかと長いリムジンにビキニにグラマラスボディーの集団が搭乗。降りてみるとこれが全てジェームス顔とビデコラがより一層炸裂、エイフェックス・ツインによるえもいわれぬノイズテクノともにとどまることを知らないいい感じを醸し出している。

Come to Daddy のミュージックビデオは、以下のサイトで見ることが出来る
http://www.warp-net.com/warp/ography/single/WAP94/cometodaddy.html
あと「問題悩殺作」Windowlicker
のミュージックビデオは、以下のサイトで見ることが出来る
http://www.warprecords.com/warp/ography/single/WAP105/

  次席は、ニューヨーク在住のドラムミュージシャン、もりいくえが受賞、独自のドラムマシーンによるパフォーマンスの独創性が認められた。 また、もう一組として、オーストリアのテクノレーベルである"mego"が獲得した。

 今までのような、実験的な電子音楽に対する視点を重視してきたこの部門の突然の変化に対して、賞の選択のプロセスにおいて、審査員団は芸術としての現代音楽をないがしろにし、実際には500以上にも及ぶ応募作品を耳に入れずに賞を決めたのではないがという憶測まで飛び出すような、強い抵抗が会期中に渡ってもたらされる事態にもなっていた。

 


サンフランシスコと結んだテレコンファレンスで語る、ライナス・トーバルズ(画面)
Prix Ars Electronica の授賞者特番のスタジオにて(オーストリア放送協会リンツ支局)

レスロケットをライブでプレゼンテーションするウィリー・ヘンスホール
Prix Ars Electronica の授賞者特番のスタジオにて(オーストリア放送協会リンツ支局)

 


何といってもライナス氏 .net 部門

→今回最大の注目となったのは、ネット部門のゴールデン・ニカに、リナックスの生みの親、ライナス・トーバルズに授与されたこと。
  リナックスがアートなのかと物議を醸す点もあるが、リナックスによって示され、インターネットの世界に花開いたオープンソースのムーブメントそのものがアートであり、また、リナックスこそインターネットが生み出した最大の創作物(アート)であるという点で、新しい技術と未来の可能性をアートから見い出す、アルスエレクトロニカにとって極めて賞に値するとの観点から、ゴールデン・ニカに輝いた。

 次席には、インターネットを通じて、ミュージックコラボレーションをマルチプレイスで実現できる、レコーディングのグループウエアとでも言うべき、レスロケットが受賞。受賞披露テレビ特番では、代表のウィリー・ヘンスホール自身がスタジオでギターを弾いている一方で、アメリカなど様々なところから他の音源が集められ、チャットによってミキシングやチューニングがまた別の場所で行われているののがデスクトップ上でリアルタイムで表示され、音が変化して行く姿を実現、スタジオ内を驚嘆の渦に置いた。なお、このレスロケットもフリーウエアである。
  また、もう一つの次席受賞プロジェクトととして、電子メールで未来へのメッセージを集め、それをCD-ROM化し、5万年後に地球に舞い戻る衛星に積み込んで打ち上げる"KEO"が選ばれた。

 また、他に選ばれた佳作の中には、あのFreeB92キャンペーンも入選している。

 

 次の項で、CG / インタラクティブアート部門を取り上げたい。

 

取材・編集・デザイン:岡田 智博  info@coolstates.com

 

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